【完全版】奴隷新法

著者: 御堂乱

本販売日:2024/04/10

電子版配信日:2024/04/19

本定価:1,749円(税込)

電子版定価:1,749円(税込)

ISBN:978-4-8296-7934-0

20××年、特別少子対策法成立。生殖のため、
女性は受胎の可能性が高い相手と性交を命じられる。
公衆の面前で犯されても助ける者は誰もいない。
孕むまで終わらない、悪夢の種付け地獄!

目次


『奴隷新法 若妻、女教師、兄嫁、美人官僚が…』


第一章 性交許可証【選ばれた人妻】

第二章 三日間の美肉奉仕

第三章 女教師【種付け教室】

第四章 職員室の生姦ショー

第五章 国家が決めた新しい「夫」

第六章 異常な世界【狂気の連鎖】


『肛虐新法 すべての人妻が奴隷にされた日』


第一章 新法から自衛する女たち

第二章 誕生日の贈り物は授精許可証

第三章 人妻ニュースキャスター、無残

第四章 仕組まれた「二重性交」の罠

第五章 人権派女弁護士、堕ちる

第六章 娘のいる家の中での肛交

第七章 マドンナ議員は聴衆の面前で

終章  公開種付け

本編の一部を立読み

第一章 性交許可証【選ばれた人妻

1

「うん、似合うよ、香澄! 最高だ!」
「本当?」
 香澄は涼やかに微笑むと、夫の前でクルリと回ってみせた。
 新品のスカートがふわりと浮き上がる。白いフレアスカートと黄色いカーディガンは今日デパートへ行って買ってきたばかり。さほど値の張るものではないがセンスが良く、知的で清楚な若妻の魅力を一層引き立てていた。
「ねえ、茂はどう思う?」
 香澄は息子にも訊ねてみた。
 テレビの幼児向け番組を観ていた五歳児は、振り向くなり、
「わあ」
 と、感嘆の声をはずませた。
「綺麗だよ、ママ」
 即座にそんな言葉が出てくるのは、父親の直之がいつも口にしているせいである。
 最初の頃は、
「綺麗だよ、香澄」
 などと、そのまま父親の口真似をしてしまい、両親を笑わせていたが、幼稚園に入った頃から間違わずに言えるようになった。ママを「香澄」と呼ぶのは、パパと、ママのお父さんお母さんである祖父母だけであること。パパのお父さんとお母さんはママのことを「香澄さん」と呼び、それ以外の人たちは、「倉木さん」もしくは「茂くんのママ」と呼ぶことも分かってきた。
 大手出版社に勤める父親に似て、茂は賢い子だ。「綺麗だよ、ママ」以外にも、「素敵だよ、ママ」「誰よりも愛してるよ、ママ」などと言う。全部父親の口真似には違いないのだが、それを言う時、茂自身も本当に嬉しそうなので、香澄も敢えてやめさせようとはしない。わきまえているのか、賢い茂は家族以外の人前ではそれを言わないのである。そんな我が子の頼もしい成長ぶりが、母親である香澄にとって何よりの幸せであることは言うまでもない。
「ありがとう、茂」
 香澄が冗談めかして頭を下げると、茂も立ち上がり、
「どういたしまして」
 どこで覚えたのか、ませたことを言って丁寧にお辞儀を返したので、直之と香澄は顔を見合わせて大笑いしてしまった。
「じゃあ、これに決めるわ」
 明後日が幼稚園の父兄参観日なのである。初めての経験なので、何を着ていこうか迷っていたが、夫と息子の賛同を得たのでこれにすることにした。ハンドバッグは去年の誕生日に義母がプレゼントしてくれたものにする。優しい夫と素直で賢い息子に恵まれただけでなく、まわりの誰もが香澄に親切にしてくれた。こんなに幸せでいいのだろうかと、ときどき香澄は怖くなることがある。
「じゃあ夕食の支度をするわね。茂は何が食べたいの?」
 母親に訊ねられて、
「うーん」
 茂は眼をクリクリさせて考えた。
「何にしよーかなあ」
「もう遅いし、今日は外で食べないか」
 夫の提案で、三人は近所のファミレスへ出かけることにした。
 土曜の午後である。ファミレスは家族連れやカップルで賑わっていた。三人が入っていくと、客はもちろんウェイトレスたちまでもが、黄色いカーディガンと白いフレアスカートの似合う清楚な人妻に注目の眼差しを向けた。最初は賛嘆と好奇心、だがその視線は、親子の仲睦まじい様子を見ているうちに、温かく優しいものに変わっていく。昔からそうだった。少女時代も、学生の頃も、美しい香澄のまわりには皆を幸せな気持ちにしてしまうオーラが漂っていた。
 食事をすませて我が家に戻ると、もう時計の針は十時をまわっていた。そろそろ着替えて寝る時間だと思っていたところに、
 ポピーン──。
 玄関のチャイムが鳴った。
(誰かしら、こんな時間に?)
 玄関に向かいながら香澄は首をかしげた。
「どなたさまでしょうか?」
「私ですよ。赤井です」
 聞き覚えのある声だった。
「……赤井さん?」
 香澄は美しい眉をひそめ、あわててドアを開けた。
 見知った元上司の顔がそこにあった。ビジネススクールを出て出版社に就職した香澄が、職場の先輩である倉木直之と出逢い、結婚するまでのほんの二年間だけ秘書を務めたのが専務取締役の赤井作治だった。上司の顔を立てるために仲人も頼みはしたものの、その自信過剰で執念深い性格がもともと好きではない──いや、はっきり言えば虫唾が走るほど嫌いだったので、結婚退職後は一度挨拶に自宅を訪ねたきり、ずっと会っていない五十男である。それでも夫の会社の重役であることに変わりはなかった。胸の内はどうあれ、邪険に取り扱うことはできない。
「赤井専務……どうなさったのですか、こんな時間に?」
「いやあ、すまないねェ。だが君に大事な用があってね」
「私に……ですか?」
 香澄は怪訝な顔をした。夫にならともかく、五年も前に寿退社した自分に今さら何の用があるというのか。
 赤井は人妻の不思議そうな顔を見てニタニタ笑っている。獅子鼻は興奮に赤らみ、毛穴を開いてフツフツと汗の玉を噴いていた。西遊記の猪八戒を連想させるその顔は、香澄が秘書を務めていた頃よりさらに醜くなっている。
「上がらせてもらうよ」
 どうぞとも言われぬうちから、赤井はでっぷり太った体で入ってきた。が、香澄を驚かせたのはそのことではない。今までドアの陰になって見えなかったが、赤井に続いて三人──男二人と女一人──が、ずかずかと家の中に入りこんできたのだ。
「な、何なんですか、あなたがたは!?」
 黒ずくめの闖入者たちに、香澄は思わず大声をあげた。
「どうした、香澄!?」
 声に驚いて、夫が居間から飛び出してきた。
「倉木直之さんですね。我々は国家少子対策センターの者です」
 身分証を提示した女は、腰まで届くストレートヘアの、知的だが冷たい感じのする美人だった。男二人は長身でサングラスをかけ、見るからに屈強そうだ。三人とも黒い高級スーツを着ていて、役人というより暴力団のような凄みがあった。
 女が提示した身分証には、「国家少子対策センター監督官No.342」と書かれている。それを見て香澄の夫は、アッと叫ぶなり死人のように青ざめた。
(まさか……まさか香澄に……そんな!)
 血の気を失った夫の顔に、香澄も嫌でも事態を察しないわけにはいかなかった。驚愕に見開いた眸で赤井の顔を凝視する。今は人妻になって子供まで産んだかつての美人秘書の顔を見返したまま、赤井は淫らな期待に猪八戒顔をくしゃくしゃにしていた。
「昨日こちらの赤井作治氏に、あなたの妻である倉木香澄氏に対する授精行使が許可されました」
 黒いパンツスーツの美女は事務的に言い、腕時計を見た。
「現在時刻は二十二時十五分三十八秒。今後三日間つまり七十二時間にわたり、赤井氏は授精対象者である倉木香澄氏に対し妊娠を目的とする生殖行為を行います」
 気を失いそうになっている香澄の夫に書類の束を渡して続けた。
「夫であるあなたには、見届け人を務める義務が課せられています。見届けを拒否された場合、もしくは生殖行為の妨げとなる行為があった場合は、特別少子対策法第二十四条第三項の規定により、懲役十五年以下の実刑が科せられます」
「そんなバカな……」
 絶句して呆然と立ちつくす父親の横で、五歳の茂はまるで黒い悪魔にでも出くわしたかのように、怯えきった眼で監督官の女を凝視している。

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