あべこべ異世界でドスケベスローライフしようとした結果、裏社会の支配者になった件

著者: 靴下香

電子版配信日:2024/04/26

電子版定価:880円(税込)

「私がかわいいなんて……うそ、そんな優しくしないで……」
美醜が逆転した異世界で、女性向け風俗店を経営しようとする転生者アリオス。
蕩ける愛撫&ディープキスで、純真乙女・トワを初体験で連続絶頂させて、
女の悦びに目覚めさせ、身も心も癒して俺のモノにしちゃっていいですか?
尽くしたがり魔術師ミア、爆乳Sランク冒険者セリカ……この世界では不遇な女の子たちを
エッチで救って身内にしていたら、いつのまにか裏社会に目をつけられて……

目次

序章 言いたいことも言えないこんな異世界じゃ


一章 隠れられない名店編

 一話 オラ王都で春売るだ

 二話 この価値観は希少価値だ

 三話 協力者を身体ごとゲット

 四話 やっぱり身体には勝てなかったよ

 五話 ロリドワーフはメスガキ疑惑

 六話 期待した結果がこれだよ

 七話 お酒イズまたたび

 八話 酔っぱらい猫は可愛いという真理

 九話 龍娘包囲網

 十話 同居人が、増えるよっ!

 十一話 唐突に始まる捕物

 十二話 いちゃラブ見せつけエッチは地獄模様

 十三話 ご奉仕特化型ロリ

 十四話 異世界の神に俺はなる(ならない)

 十五話 身請けは合法ですか

 十六話 各所の方々

 十七話 大人の我儘は見苦しい?

 十八話 (意識)キレちまったよ……

 十九話 ぱわーあっぷ

 二十話 龍娘開店にともない

 一章閑話 ご奉仕練習は見せつけられエッチ

 一章閑話 変えられちまったロリ

 一章閑話 自慰愛好者

 書き下ろしSS ドスケベスローライフな一コマ

本編の一部を立読み

序章 言いたいことも言えないこんな異世界じゃ



 感性の違いとは厄介なもので。
 異世界人、というより前世の記憶というべきだろうか、ここではない何処かで生きていた、かつての自分を思い出したのはレイプされた時だった。
 襲われた時のはずみで頭を強打し、それまで生きていたアリオスという少年は死んで、前世の感性が新たに宿り覚醒した。
 幸運だったのはレイプ犯が前世の自分にとって極めて美人だったこと。
 綺麗な赤い髪、黄金比といって良いだろう身体つき。
 申し訳なさを顔に浮かべながらも、肉欲を我慢できず腰に宿らせ、快楽へ表情を歪ませる顔は今もなお忘れられず、素晴らしい筆おろし体験だったと断言できる。
 いや、俺がマゾ豚だとかそういう話ではない。
 しかしながら自分にとってラッキーだったのはそれだけだった。
 それはたとえば豚顔の力士を彷彿とさせる姿のオークという種族である自分の母親が美人だと持て囃されてることだったり。
 そんな母親が毎晩父親だけでは満足できず、夜な夜な男を求めて街へ繰り出すことだったり。
 どう考えてもヤバイ母親のことを美人だから仕方ないとか、家族も世間も暗黙の了解的に認めていることだったり。
 いやぁ、正直頭がおかしくなりそうだったよね。
 俺から見ればゲテモノが男日照りに我慢できず彷徨《さまよ》ってるだけにしか見えないんだもの。
 けど襲われた、あるいは買われた男は喜んで身体を捧げていたわけだ、あり得ん。
 極めつけは兄だ。
 兄は母親にレイプされ、安らかな表情を浮かべながら腹上死した。
 幸せそうに息を引き取った兄を見て父親が言うわけだ、こんな美人の相手ができて死ねるなら男として本望だっただろうと。
 ダメだよ、こんなんじゃ俺、狂っちまうよ。
 決定的だったのは俺が美人さんにレイプされた後だ。

 ――アリオスの童貞は私が食べるはずだったのに。

 危うい目をした母親のそんな言葉を聞いた日、一目散に家から逃げ出した。
 前世の記憶や感性がないままであれば、興奮すること間違いなしな言葉だったんだろうけど。豚がにちゃあと浮かべる笑顔にエロスは感じられないし、金玉竦み上がるわけで。
 上手く家から逃げられた俺ではあったけど、それで世界の常識から逃れられたわけでもなく。
 十三歳の子供だった当時、別の街に辿り着くまでにもそれなりのドラマがあったわけだ。
 金もなければ力もない。あるのは魔族種と呼ばれる種の一つであるオークと人間種のハーフであるこの身体だけ。
 詳しく語るつもりはないし語りたくもないが。
 道案内を誰かに依頼しようにも金がない、ならばと要求されるのは身体。わかりやすいが勘弁してほしい。
 しかしながら、流石オークの血が流れているというべきか、子供とは言えないチ×コの大きさだったし、絶倫と言って間違いないだろう無限を思わせるくらいに精子は製造される。
 精神的な興奮なんて知ったことかと問答無用で反応してしまうイチモツなんて、ある意味好都合な我が身体。
 いっそ不能になってしまえたら諦められたのかもしれないが、勃つものは仕方がない。
 早々に色々諦めた。諦めて自分の身体というものを利用することに決めた。
 冒険者組合を通さず、世界を股にかける冒険者の人たちへ声をかけては身体を売り、道案内や護衛を依頼した。
 爛れた生活のおかげで随分とセックスも上手くなって、自分の武器と言えるようなくらいになったころ。故郷から遠く離れた街に腰を落ち着けられた。
 ありつけた仕事は飯屋の店員。
 十段階でいえば真ん中くらいの容姿とされていたから看板息子にはちょうどいいと雇ってもらえた。
 容姿評価についてどう受け止めたらいいのかはわからない、というかわかりたくない。
 元々そこそこに繁盛していた店は、身に着けたくなかった謎の色気を放つ俺が雇われたことで更に儲かって。
 たまに冒険者の人からのお誘いなどを躱したり受けたりしながらも、普通と言える生活を送る事はできた。
 けど、やっぱり価値観の違いってのは辛いもんで。
 店に来る冒険者の容姿がどうだったりなんていう、従業員同士での何気ない話でズレを感じるもんだ。

 ――あの客、やっべぇ美人。

 同僚が言うから目を向ければ、向けたことを後悔してしまうなんてざらだった。
 それでも看板息子とされているだけに接客しないわけにもいかない。
 相手だって自分のことを美人だと思ってるし、こっちがお断りしたいなんて欠片も思ってないことを忘れてはいけない。
 むしろこんな美人に声をかけられて嬉しいでしょ? なんて思いあがっているというか、傲慢なヤツだっていた。
 周りにしても、羨ましいなこの野郎! なんて言ってくる始末で。
 そんな人に多く声をかけられるもんだから、声をかけて欲しいと思える俺にとっての美人は身を引いていくって二重苦が辛い。
 結局、故郷を出てから今に至る五年間は、世界と自分のギャップに苦しめられ続けた日々だった。
 だから。

「そうだ、ひきこもろう」

 ある日悟った。
 どうあがいても生きている限りこのギャップには苦しめられ続ける。
 だったらひきこもったまま、可能な限り人との関わりを避けて生きようと考え至ったんだ。
「辞めたいって? また急に何言ってんだおめぇ」
「いや、この仕事に不満があるわけじゃないですよ?」
 マスターが渋顔で呆れている。
 嘘でもなんでもなく、この仕事に不満があるわけじゃない。
 この五年で料理も上手くなったし、世渡りも上手くなったと思う。世界の常識についても苦しいほど理解できた。
「なんだ? じゃあ給料に不満か?」
「いえ、十分頂いています。けどもっと、自分の力を活かせる仕事があるんじゃないかと思って」
 正直そこいらの飯屋の店員としてはかなりの額を貰っている。
 外にあまり出かけたくないこともあって、金は貯まる一方だ。
「ほぉん。まぁ、たかが飯屋の店員で終わるには勿体ないわな。じゃあなんだ? 高級男娼でも目指すか? おめぇなら――」
「それも選択肢の一つではありますけど。ご存じの通り女の人はちょっと苦手ですし」
 言い訳というか予防線として、子供の頃にレイプされてから女の人は苦手だと言っている。
 そのおかげで女の人に言い寄られても上手くフォローしてもらえていたのはありがたいの一言だ。
 とはいえフォロー空しく貪られたことだってある。
 こっちとしては激しく遠慮したい相手にもかかわらず、マスター含め同僚からも、この相手なら大丈夫だろうと送り出された経験は色々な意味で忘れられない。
 嫌々ながらも相手をした女が翌日、俺に対してだけじゃなく、店にまでも感謝の言葉と共に結構な額の金を包んで来るのはよくある光景で。
 そんなのを何度も見てきたから男娼を目指しても成功するだろうと思われているんだろう。
「まぁ、そうか。じゃあどうするんだ?」
「王都で旗屋をしようかと」
 そう言えばマスターは目を丸くした。
 旗屋は言ってしまえば身売り業だ、個人でやる風俗店と言ってもいい。
「い、いやおめぇ。それだったら娼館に勤めりゃいいじゃねぇか!? なんだって女嫌いのおめぇが!」
「確かに娼館に勤めれば国から保護と保障が受けられます。とんでもない容姿の人はお断りできますし、給料だって文句なし。けどそれは、得できる人が得をし続ける制度でしかない」
 聞いた当時はマジでびっくりしたもんだ。
 男娼って職業は神聖視されてすらいる。恵まれない女性に愛の手を差し伸べる高潔な存在だと。
 ぶっちゃけ、容姿最低ならお断りできるって文句さえなければ飛びついていただろうなとは思ってる。けど、俺にとって容姿最低は最高の美人ってことでもあるわけで。
「この店に来る、その、なんだ。とんでもない不細工って人の寂しそうな目。俺は、それが耐えられないんです」
 出まかせではあるけど、本音でもあったりする。
 何度積極的に俺へと声をかけて来る女に対してお呼びじゃねぇと言いたくなったか、そっちのおねーさんだったらどんだけ嬉しいかと思ったか。
「おめぇ……」
「女嫌いは、そうです。けど虐げられている女の人まで嫌いにはなれないんです」
 旗屋を利用する女性層ってのは基本的に娼館入店禁止されたような人だ、俺にとってはパラダイスってわけでもある。もちろん例外はあるだろうが。
 でも個人でやるから自分の価値観を殺すような付き合いをする必要もないし、悲しいかなこれまでに培われた性技も役に立つ。
 俺にとってうってつけの職業なのだ。
「ちょっと待ってろ」
「え、はい」
 いきなり立ち上がったと思ったらバタバタと奥へと引っ込んでいったマスターを見送った。
 去り際、目端に涙が見えた気がしたけど、自分に都合良く言い過ぎてしまっただろうか。
 ここで働き続けるのも悪くない道ではあるんだろう。
 けどマジで疲れるのだ、この世界の常識で形成されているルールやコミュニティの輪の中に生きるっていうのは。
 ちょっとした男同士のコミュニケーション、エロ談議にしても気を遣うし。
 いい女を捕まえたと紹介された友人の彼女がとんでもない容姿だったときもそうだ。

 ――お前も良い女に捕まえられろよ、今度一緒に飲みに行こうぜ。
 ――なんだったら私の友達を紹介するわよ?

 容姿が悪けりゃ心までなんて、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いみたいな話じゃない。
 相手が善意を向けてくれるとわかってるのに、悪意に感じてしまうってのは想像以上の苦痛なのだ。
 まだボロは出てないが、それでも積極的に他者へと関わろうという気持ちはすっかり萎えてしまった。
 このままここで働いていたら、いつか絶対に致命的なミスをする。もしくは、自分の心が壊れてしまう。
 ここに辿り着くまでと割り切れていた過去とは違う、先の見えない人生だから耐えられる気がしない。
 故に、ひきこもることを選ぶ。
 最低限の接客をして、食うに困らない程度の生活をして。
 いつかこの世界の価値観に慣れることができたらいいなと思う。無理ならその時はその時だ。
「こいつを持ってけ」
 バタバタと帰ってきたマスターから渡された上等な紙。
 見てみればそこには。
「け、権利書?」
「王都で店を構えてた時のモンだ。龍娘《ろんにゃん》って名のちっせぇ店だが旗屋するには十分すぎらぁ。話は通しておく」
 これはありがたい。ぶっちゃけ家を借りるにしても身分証明が大変だし、助かる。
「へっ、娘には言っておく。おめぇとアイツが切り盛りする様を見たかったってのが本音だが……ワシ含めて女に男気を邪魔する権利なんぞねぇ、しっかり気張ってこい」
「マスター……」
 ありがたいけどそれは初耳。
 娘さんってあの髭モジャだよね? 危なかった。
「はいっ! 頑張ってきます!」



「──あぁそうだ、ワシが本気で息子と呼びたいと思った男だ。わかってんな?」
「それはもう。ですが、よろしいのですか? 龍娘は――」
「トワよ、ナメてんのか? もう一度言うぞ? 息子と呼んでいいと思った男だ」
「も、申し訳ありませんエルド様」
 淡く輝く水晶越しの会話が部屋に響く。
「久しく忘れていた男だよ、あいつは。ワシの枯れた女が疼いちまうほどに。あぁ、そうだな。簡単に惚れちまわねぇ様に気ぃ付けろ?惚れるなら覚悟が必要だぜ?」
「お戯れを。よしんば心奪われても、私なんて相手をしていただけません」
「くっくっく、そうだと、気ぃ楽なんだがなぁ? まぁいい、また連絡する」
 光を消して黒くなる水晶。
 その前で大きく息をつきながら気を抜けば持ち上がってしまう口角を抑える。
「お母様」
「おう、リリエル」
 背後から現れたのはもみ上げが顎まで肌を伝い伸び、髭と見間違えても仕方ないと思える毛むくじゃらの女。
「すまなかったな、相談もなく。男気に負けたよ」
「いえ、大丈夫ですわ」
 大丈夫だと首を振るリリエルと呼ばれた女だが、瞳にはやはり残念だという色を隠せない。
「折角本当のお前を受け入れてもらえるかもしれない相手だったんだがな」
「あまり、残念だとこれ以上思わせないでくださいませ」
 言いながら口元で小さく何かを唱えたリリエル。終えると共にその容姿が先程とは別人に変わる。
「変身能力に長けるエルフの血が濃くて良かったというべきか、悪かったというべきか。まぁいい、折を見てあいつの旗屋に遊びに行っても構わんぞ?」
「そのつもりですわお母様。旗屋であれば身分も問いませんし――」
 そう小さく笑うハーフエルフ。
 その姿は、この世界において正真正銘の醜女であり。
「――わたくしの宝物を、こんな形で逃すつもりもありませんわ」
 アリオスにとっては好みドストライクな、至高の美女であった。

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